『読むための理論』の「作者」の項目で、『生と歌―中原中也とその後』(角川書店、1982年)で大岡昇平が中原中也の肖像写真に対する〈永遠の少年〉らしく見せる修正について指摘していることが紹介されているのだが、その詳細を確認したかったのだ。
『大岡昇平全集』18巻(筑摩書房、1995年)は中原中也について書かれたものを集めた巻で、実際にその件にふれているのは「写真像の変遷」という『太陽』1980年11月号に発表された評論である。

『読むための理論』で紹介されていた写真は2葉だけだが、元の評論では29歳時の大人っぽい別の写真も含めて8葉も掲載されている。
読んでみると同じ時に撮られた二種類の写真がそれぞれに修正されているということなので、けっこう面倒な話であった。
ちなみに『読むための理論』で紹介されている二葉は写真aの修正されている3と写真bの修正されていない4だったということがわかり、感じていた違和感も解消されたのだった。