2019年04月30日

戦後文学者と天皇

1989年1月7日も8日も、一週間後の締切に向けて大江健三郎を論じた修士論文を書いていた。

2019年の4月30日も5月1日も、昨日最後にふれた三島由紀夫や石原慎太郎が登場する評論を読んだし、読むだろう。

しかし、かつては天皇について論じなかったのが、その後論じるようになっている。

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述(5) 近畿大学国際人文科学研究所紀要 反原発問題

これに載せた論文も読み直す必要がありそうだ。
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2019年04月29日

「バナールな現象」の天皇

52節に、次のような「友人」の科白がある。

ーーそれはともかく、御指摘のとおり僕は砂漠に出てオアシスに到着した。それでいまやここに必死でしがみついているわけだ。不毛な砂漠じや生きていかれないからね。そういえば、オアシスに呑まれたツァラトゥストラの「影」は歌を歌うよね。 つくづく自分がヨーロッパ人だと思い知って最後に諧謔的な歌を歌う。「私はやっばり西欧人。ほかにはどうにも仕方がない。神様、助けて、アーメン!」というわけだ。しかしあなたがいうように僕はツァラトゥストラの「影」じゃない。僕が歌うならだからこうなる。私はやっばりニッポン人。ほかにはどうにも仕方がない。神様ってのもおかしいから、天皇陛下かな。天皇陛下、万歳!


1991年のできごと?ということになっているので、ここで名指されているのは明仁天皇ということになるが、この「万歳!」は生前の裕仁天皇に向けられていたものを踏まえて揶揄しているようにも読める。

そういえば、この本を入手したので、読んでいきたい。

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2019年04月28日

妻の逃走

「バナールの現象」の主人公木苺勇一の妻はとつぜん行方不明になるのだが、同じ1994年に発表された村上春樹「ねじまき鳥クロニクル」でも主人公・語り手岡田亨の妻が行方不明になる。

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どちらも天皇没後小説なのだが、それ以前村上春樹「TVピープル」でも最後にTVピープルによって語り手「僕」の妻が帰って来ないことが告げ知らせられる。この小説が発表されたのは、1989年の前半である。

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この短篇が収録された同題の短篇集には、1989年に書かれた短篇が集められており、概ね不全感を抱いた人物が登場する。寓話的な読み方は採用しない方針だが、もう一度読み直してはおきたい。
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2019年04月27日

昭和天皇没後の小説2

昨日あげた二つの小説の間に発表された、奥泉光の1990年代初頭の小説。

蛇を殺す夜1991年

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ノヴァーリスの引用1993年

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石の来歴1993年

昨日書いた「バナールな現象」の印象は、どうやら「ノヴァーリスの引用」のものと混じっていたようだ。なにしろ20年以上前のものなので。
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2019年04月26日

昭和天皇没後の小説1

1989年1月の昭和天皇の死がその後の小説とどう関わっているかについて1990年代前半の小説を読みかけている。

まずは、1991年と1994年に発表された次の二作。

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今は「バナールな現象」を再読中。1990年代に読んだ時とはずいぶん印象が違う。というか、細部はほとんど忘れていたが、斎藤美奈子が『日本の同時代の小説』で「湾岸戦争を扱った、本邦唯一の作品」と呼ぶこの小説が記憶していたよりもずっとコミカルに書かれていることに気がついた。
かつては天皇没後小説としては読んでいなかったので、さらに違う読み方ができるといいのだが。

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2019年04月25日

近世の出版メモ3

『日本文学』2008年10月号 特集・近世文学 出版と流通

・江戸と大坂の板元が共同で出版した読本もあった。そして、江戸で使われていた本と大坂で使われていた本とを等量交換する「本替」という習慣があった。
それだけ本の流通経路が確立していたということですね。

・天保五年の並合巻の価格は八十八文。柳亭種彦や曲亭馬琴のような人気作家のものは上製本として百十文で出版されていた。

・長編合巻も複数の板元が共同で出版することがあった。

・天保三年冬あたりから紙価格が高騰し、天保七・八年ごろには合巻価格も上昇していった。
板元は人気作者・人気画工の合巻の価格を通常の合巻よりも引き上げることで、収益の確保を目指した。

前に『浮世絵の流通回路』を取り上げた時に信州でも出版物が流通していたという話を書いたが、実際の読者の蔵書リストによると信州の書店で「続日本紀」や「韻鏡」や「古語拾遺」を買っていたとのこと。

既に天保期に作者の人気で本が売れる状況が生じていたことになる。
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2019年04月24日

近世の出版メモ2

・近世においては版本よりも写本の方が重んじられていた。

・著名な作者の合巻の出版部数は7000から8000冊。けっこう刷ってる。

・柳亭種彦は葛飾北斎や弟子の蘭斎北嵩と仕事を通して交流があり、西村屋という版元ともその縁でつながったらしい。
「狂歌摺物等の制作を通じて画工、筆耕を含めた文芸グループが形成され戯作者を生み出していくという構造があったものと推測される。」(鈴木悟「十九世紀江戸文学における作者と絵師、版元の関係」198頁)

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あと、「文人」について解説した章が、日本文学史2の参考資料として使えそうである。

次は注に出てきた『日本文学』2008年8月号を読んでみる予定。
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2019年04月23日

「太平記」から応仁の乱前史

『首塚の上のアドバルーン』読み終わる。

最後の表題作でタイトルになっている馬加康胤の首塚にまつわる資料に出て来る、十五世紀半ばの東国の戦乱は、「新九郎、奔る!」で応仁の乱前史として解説されているものだった。
意外な繋がりである。

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2019年04月22日

ベンヤミンと「太平記」

以前、別のテーマでベンヤミン「ボードレールにおける第二帝政期のパリ」を引用したが、後藤明生『首塚の上のアドバルーン』を読み直したところ、はじめの二作、「ピラミッドトーク」「黄色い箱」に引用されていた。同じ岩波文庫の野村修訳で、十九世紀パリの住宅についての箇所と、大都市パリの見知らぬ人々と日々すれ違わなければならない環境についての箇所。後藤明生の団地もので書かれていたことを、ベンヤミンの言葉を借りて語り直したということか。

その後、「太平記」が引用されるようになり、天皇、特に南北朝という天皇が唯一絶対ではなかった時代への言及が出て来る。

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2019年04月21日

「実証主義」について

昨日のエントリで「実証主義」と書いたのは、ロラン・バルト「作者の死」の言い回しをふまえたもの。フランス語の言語では posivitisme となるが、日本語訳だとこんな感じで出てくる。

われわれの社会が中世から抜け出し、イギリスの経験主義、フランスの合理主義、宗教改革の個人的信仰を知り、個人の威信、あるいはもっと高尚に言えば、《人格》の威信を発見するにつれて生みだされたのだ。それゆえ文学の領域において、資本主義イデオロギーの要約でもあり帰結でもある実証主義が、作者の《人格》に最大の重要性を認めたのは当然である。
(花輪光訳)


「資本主義イデオロギー」と関係づけられているのがポイントなのだが、詳しくはまた別の機会に。

物語の構造分析 / ロラン バルト
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2019年04月20日

和歌についての学会の発表会

全くの素人として参加。

『毘沙門堂本古今集註』という中世に作られた古今和歌集の注釈本についての発表を聞いた。
本題に入る前の当該の本についての説明で、「読み人知らず」の歌に作者を当てていたり、詞書や左注の無い歌に、実はこういう状況でとか、いつどこで詠まれたとか今から見るとかなり疑わしい注釈が附されているという話があった。

やはり作品の作者への関心はずっと持たれ続けている訳だが、そこに「実証主義」が導入されるかどうかで違ってくるのだろう。
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2019年04月19日

『アミダクジ式ゴトウメイセイ 座談篇』(続き)

今日も続けて読んでいる。

『首塚の上のアドバルーン』を読み直した方がいい気がしてきた。

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首塚の上のアドバルーン / 後藤明生

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2019年04月18日

『アミダクジ式ゴトウメイセイ 座談篇』

アミダクジ式ゴトウメイセイ【座談篇】 [ 後藤 明生 ] - 楽天ブックス
アミダクジ式ゴトウメイセイ【座談篇】

読み始めた。
昨年9月のシンポジウムの準備で読んではいたが、観点が変わると読みどころが変わる訳である。

小田切秀雄が「内向」と言ったのは結局マルクス主義を踏まえていないということで、確かにそういう「主義」を信奉せず相対化するというところが後藤明生にはある。では、天皇制をどう捉えていたのか、というのが今回の関心となる。
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2019年04月17日

近世の出版メモ

・日本において出版が産業として始まったのは寛永年間(1624-1645)。

・藤原定家の「駒とめて袖打ち払ふかけもなし佐野のわたりの雪の夕暮」の歌は繰り返し歌絵になっているが、描かれている人物が定家なのかどうかは意見が分かれている。
小町・業平のような伝説になっている人物に比べると、絵の題材になりにくいのは確か。ただ、代表歌なので、作者として描かれても不自然ではないと考える人もいる。

・百人一首の歌を題材にした浮世絵では作者が描かれる。描かれる姿は平安時代の風俗だったり、江戸時代(同時代)の風俗だったりする。特に人麻呂は歌仙として信仰されてきたため12世紀から描かれていて構図も決まっている。

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浸透する教養 江戸の出版文化という回路 / 鈴木健一編
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2019年04月16日

大江健三郎「戦後世代のイメージ」1959年

昨日書いた大江健三郎の話だが、記憶違いで、「玉音放送」を聞いた後、友達の一人が《天皇の声》を真似たのを聞いてみんなで笑ったという話と、「天皇制が廃止になると大人がいっているが、それはほんとうだろうか?」と教師に聞いたら殴られて足蹴にされたという話が混ざっていたようだ。

昨日リンク貼っておいたエッセイ集『厳粛な綱渡り』の冒頭に収録されている。

八月十五日の神話 終戦記念日のメディア学 ちくま学芸文庫 / 佐藤卓己 【文庫】 - HMV&BOOKS online 1号店
八月十五日の神話 終戦記念日のメディア学 ちくま学芸文庫 / 佐藤卓己
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2019年04月15日

『アミダクジ式ゴトウメイセイ 対談篇』(続き)

後藤明生のキーワード〈笑う・笑われる〉関係については、天皇のようなかつて笑うことが表向きは禁じられていた、そして現在も笑うことがはばかられる存在をどう扱えるのか、という疑問があったのだが、今回はそのあたりを整理できたらと思っている。

大江健三郎の天皇について校長が話している時に笑ってしまって殴られたというエピソード(うろ覚えなので要確認)と関係づけられるかもしれない。

厳粛な綱渡り 全エッセイ集
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2019年04月14日

『アミダクジ式ゴトウメイセイ 対談篇』

天皇についての記述を探しながら読むが、意外に無かった。
三浦雅士との1982年の対談「「十二月八日」に映る内向と自閉の状況」では「天皇制」についての言及があるが、この言葉を使っているのは三浦雅士の方だけである。
更に調査を続ける予定なり。

アミダクジ式ゴトウメイセイ【対談篇】 [ 後藤 明生 ] - 楽天ブックス
アミダクジ式ゴトウメイセイ【対談篇】 [ 後藤 明生 ]
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2019年04月13日

佐藤卓己『流言のメディア史』(岩波新書)

流言のメディア史 岩波新書 / 佐藤卓己 【新書】 - HMV&BOOKS online 1号店
流言のメディア史 岩波新書 / 佐藤卓己

読んでる。

ラジオドラマ「宇宙戦争」についての伝説(それ自体が流言)が解き明かされた話は知っていたが、詳細を確認した。
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2019年04月12日

近世の出版についての参考文献

書名:蔦屋重三郎 / 鈴木俊幸著
(平凡社ライブラリー ; 756)
出版者:東京 : 平凡社
出版年:2012.2

書名:書籍の宇宙 : 広がりと体系 / 鈴木俊幸編
(シリーズ「本の文化史」 ; 2)
出版者:東京 : 平凡社
出版年:2015.5

書名:生産・流通・消費の近世史 / 渡辺尚志編
出版者:東京 : 勉誠出版
出版年:2016.9

書名:近世読者とそのゆくえ : 読書と書籍流通の近世・近代 / 鈴木俊幸著
出版者:東京 : 平凡社
出版年:2017.12

どのくらい作者の置かれた位置についてふれているかは読んでみないとわかりませぬな。
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2019年04月11日

鈴木俊幸「浮世絵の流通回路」2017年

下記の論集に掲載された論文で、日本の出版における産業資本主義の成立について調べようと思って読んだ参考資料である。

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浮世絵の出版は江戸時代の前半においては江戸の中だけを想定したものだったが、地方から来た人々の江戸土産として地方に運ばれ享受されたものだった。
それが19世紀になると、江戸の近辺、たとえば信州・甲州地方の街や、上方にも浮世絵を含む様々な出版物が小間物屋で扱うようになり、さらに広い範囲に流通するようになったとのことである。

近代になって機械を用いた出版や流通が始まった訳だが、流通経路や享受者はその前から準備されていたことになる。
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